ライブ終了。ありがとう!
2011年 03月 22日
チケットは75枚作りました。当初はチャペルコーラスの発表も予定していました。
包装も何種類かの袋見本を送っていただき、そのなかから選びました。わたしの好きな絵本『あおくんときいろちゃん』に雰囲気が似ていて、Heaven's Gardenらしい素敵な仕上がりになりました。すごくテキパキと対応してくださってわたしはライブに間に合えばいいなと思っていたのですが、なんと2週間前に送られてきていました。たしか料金を振り込みに行った日に震災に見舞われたと記憶しています。その後の輸送経路はほとんど機能していませんでしたので、早めに送っていただいて正解でした。
嬉野の人に聴いてもらいたいなと思っていたら、ライブ一週間前になって、嬉野出身の知人がメールをくれました。嬉野の教会でいっしょに育ったお兄ちゃんでした。今は明治座の前で呉服屋さんを営んでいて、横浜に住んでいらっしゃいます。ライブのことを伝えると「祝日なら店が休みだから行ける」とのこと。神さまはほんとうに粋なことをなさいます。
阿部望さんのスタジオに何度もお邪魔して、朗読とマリンバ、歌とピアノの練習をみっちりやりました。練習の最後に必ず、「聴いてくださる方に少しでも平安が訪れますように。わたしたちの音楽が、心を和らげるものになりますように」とふたりで祈りました。それは震災が訪れる前からの、いつものことでした。
5日前になって、ギターのハセガワダイスケくんが「ライブの件ですが、どんなお考えですか?」と電話をくれました。いろんなところのいろんなイベントが次々に中止や延期になっていく中での相談でした。延期の可能性があること、その場合「まけるなまけるな」を無料ダウンロードできるように設定できることなど、お客さんを配慮した彼らしいやさしさに満ちた提案でした。
「わたしはやるつもりでいます。Heaven's Gardenは、いのちの際を生きる人たちに音楽や言葉を届けるために始めました。こんなときだから、みんないっぱい頑張って疲れている。その疲れに寄り添いたい。ライブを楽しみに今頑張っている人もいる。そう思ったらやっぱりやりたいの」
「わかりました。のぶえさんはそういうと思っていました。もしやるのならば、安全確保を考えましょう。防災ずきんを持ってきてもらうとか、避難経路の移動の仕方を説明するとか」
「うん。ありがとう。わたしも考えてみる。お客さんは少ないと思う。だけどお客さんも必死の思いで来られると思うから、入場料はすべて被災地への義援金にするつもり」
「わかりました。前日のリハーサルまでに何が起きるかわからないから、何もなければ、その時にいろんなことを決定しましょう」
「ありがとう。頼りになります」
チャペルコーラスのメンバーにも意見を伺いました。やるなら全員で、と思っていたからです。伺ったところ被災地に住む家族が助けを求めていて、そちらに行くので参加できないという方がいらっしゃいました。そこで、チャペルコーラスの演奏だけは延期することにしました。でも多くのメンバーは、こんなときだからこそ、という思いもあるから、やると言われたら歌います!とおっしゃってくださって心が支えられました。
とても悩みましたし、不安だったし、心配もありました。
でも、日一日とみんなが疲れていく中で、小さな揺れにさえ心が震える中で、ほんの一時間だけでも音楽に心と体を委ねて、体にたまった疲れや恐怖を吐き出せたら、きっと次に行けるんじゃないかと思ったのでした。
前日の礼拝の後、音楽主事の84歳の女性が「いよいよ明日ね」と声をかけてくださいました。
「延期も考えましたけれど、やります」
「そう」
「避難経路もちゃんと考えてみんなにも話すつもりです」
「教会はね、本来、避難所の働きも持っている場所です。がんばってね」
避難所。昔から人々が大切にしてきた教会の働きを引き継ぎながら、この場所で演奏できることを神さまに感謝しました。
前日の午後、阿部望さんの巨大なマリンバが組み立てられ、不思議な数々の打楽器の運び込まれると、心配顔だったみんなの心がワクワクしてきました。
リハーサル。声がいつものように開かないことをハセガワダイスケくんに見破られました。おそらく緊張していたのだと思います。でも、音響を整えたり、ギターの新しいアレンジが生まれたりしていく流れに沿って、少しずつ声が伸びていきました。自分が思っている以上に体は疲れていることがわかりました。でも、とにかく明日、歌いたい一心でした。
当日、開場時間を過ぎてから人がぱらぱらと入ってきました。
少なくとも3人は確実に来るとの連絡でした。多くて30人かなと思っていたら、ほんとうに子どもも入れてぴったり30人が集まりました。うれしかった。
まけるな まけるな 地震にまけるな 停電にまけるな
怖い!にまけるな 花粉にまけるな(はくしゅん)
みんなで「まけるな」と叫びました。大きな声で、何回も、何回も、何回も。たくさんの人が涙を流していました。
苦しかったね。辛かったね。よくがんばったね。
まけたら一度 ひとやすみ(やすめ!) 今度はきっと まけないさ!
何度も休んで、きちんと休んだらきっと次に行けるから。
最後に、「この空つづいて」をみんなで歌いました。被災地塩釜に実家がある人もいました。
離れていても いつも この空 つづいて
笑顔が健やかな日々が 護られていますように
離れていても いつも この空 つづいて
やわらかな愛につつまれ 慰められるように
詩編40編6節