『すこやかな生き方のすすめ』桜井章一・よしもとばなな(廣済堂出版)
2012年 01月 25日
なにゆえその人とばななちゃんが、と思いつつ読んでいくと人のありようや人間関係についての洞察が書かれていて、大変興味深かった。勝負師、麻雀道場の主というといかついハードボイルドなイメージがあるが、桜井さんは自然に学べと繰り返し言っていて、最後の最後の言葉にわたしはがつんとやられた。
これですよ。ほんと。人間はこれを忘れちゃいけない。絶対に。
「…忘れてはならないことは、人はすべて、被害者であると同時に、加害者であるという側面を持っているということ。つまり、どんな立場でいようとも、決して無傷できれいな身ではないということです。少なくとも、それだけは忘れてはいけない。そして、『人が人として生きることは、それだけですごい』ということに気づけば、もう十分に生きていると言えます。人として生きるということは、自分が自然界の無数の生き物とともにあることを感じること。そこにこそ、生きる根っこがあると思うんです」(桜井章一)
以前、心を悩ませるできごとがあった。問題解決のために考えつくことはやったつもり。でも、すっきりしない日々が続いた。これ以上どうすればいいのかわからない。どん底でもがいていたのだが、このまま家に閉じこもっていてはそのまま病んでしまう気がして、思い切って外に出た。
ウォーキングのコースは横浜といえど梅や竹の林があり野趣にあふれている。歩きながらも考え悩んでいたら、足元にいやあな感触があった。
数歩戻って道路を見ると、おなかの大きいカマキリが瀕死の状態にあった。やってしまった。
その時にふと思ったのだ。
カマキリを踏んでしまうほど悩んではいけない。そんな悩みはわたしの容量を超えている。
一度、問題から心を離してみると、すぐあとに、ぱーっと目の前が広がるようなアイデアが浮かんだ。偶然親友から電話がかかってきたので話をすると、「ものすごいチャンスやね、それ。わくわくする」という。
傷みや苦痛は、その後も続いたけれど、カマキリがいのちを張って教えてくれたことは、わたしに希望をもたらしている。
被害者であると同時に、加害者である。
忘れてはいけない。たいせつなこと。