お母さんみたいな友人と

先週から、バイト先のレストランのランチタイムは満席状態が続いている。

お!今日はあの席は予約が入っていないな、と思っていると新規のお客さまが入ってきて、結局、「本日は満席です」とあいなるのである。

今日は見事に女性ばかりの満席だった。

女の人はすごいなあ。
エネルギーをおしゃべりで消費しながら、新しいエネルギーをお料理でつぎ込むのだもの。
あれじゃあ、帰ってからまたたべるな、きっと。

コースのお料理は、一皿ごとに説明をすることになっているのだけれど、楽しそうなおしゃべりを中断させなければならず申し訳ないと思ってしまう。
しかし、今週はフランス産の野生のアスパラガス、アスペルジュ・ソバージュの説明がだいじ。2週間しか採れないんですよ。そんなラッキーなお知らせをしないわけにはいかない。

お客さまによっては、ひとつひとつの説明をしっかり聴いてくださる方もある。

「本日のアミューズ、前菜でございます。

右手のグラスは、白ワインビネガーで締めたサバとイカのマリネでございます。ドレッシングがグラスの底に落ちていますのでどうぞお箸でお野菜といっしょにお召し上がりください。

左手の白いポット、蓋をとっていただきますと、フォアグラが入っております。フォアグラのロワイヤル、西洋風の茶わん蒸しでございます。トリュフソースがかかっております。どうぞごゆっくりお召し上がりください」

私の顔をみつめ、「フォアグラ!」、「へえ、茶碗蒸しなの」と言いながら、その表情はうっとりととろけそうになっていく。 女の人は幸せだなあ、おいしい料理に出会うだけで、こんなに愛らしいお顔になるのだもの。

そして、しゃべる。

いいです。もうほんと。
好きなだけ味わって愉しんで食べた分だけ消費していってください。

今日は、めずらしいことにカウンターにもお客様がいらっしゃった。お母様とお嬢様。
軽やかに静かにおしゃべりを楽しみ、スムーズにお食事も味わわれて、さっと席を立たれた。とても素敵な印象だった。

こういう組み合わせのお客様を見ると思うのだ。 お母さんに、こうやっておいしいものを食べさせてあげたかった、と。

今日は母が天国に帰って19年の記念日だ。
まだ20代前半だった私は、自分のことでいっぱいで、お母さんにおいしいものを食べさせてあげようなんて思ったこともなかった。むしろ、まだ食べさせてもらいたいと思っていた。ごめんね、お母さん。でも、今もとても愛している。そんな気持ちだけを今日は一日抱きしめて過ごした。


昨夜は、仕事が終わった後に、再びお店に出かけた。忘れものを取りに行こうとしたら、ご近所の友人も行きたいと言う。

わたしは生を飲みながら、友人はおしゃれなカクテルを飲みながら夜の休息を味わった。
一息ついて、友人が言った。

「年をとって、こんなきれいなお店で、こんなおいしいお酒が飲めるようになるなんて思ってもみなかった。いいねえ」

わーん。思わず涙がこぼれそうになった。たくさんたくさん働いてきた友人にこそ、こういう時間を楽しんでほしい。40年近く同じ場所で働いて、いや、働き続けてきた彼女はお母さんみたいだ。

「まだお給料出てないから、今夜はおごれないけれど、これからたまにはいっしょにお店に来よう。ゆっくり羽を伸ばして、リラックスしよう。つきあうよ」

親孝行はできなかったけれど、こうして70歳手前の素敵な友人を飲みに誘えるのはとてもうれしい。

来月はおごってあげたいな、しっかり働こうっと。満席、ウェルカム。

おいしい時間をボナペティ!
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Commented by 横浜の佐々木家 at 2012-06-04 21:29 x
素敵な出会いがあって、羨ましいな。
ずーっと子育て続きで、今更働けないって思ってたけど、自分の時間、新しい出会い、全て私にもあるといいなぁ。
頑張ってみようと思った。
友美。

私はテスト勉強頑張らなくちゃいけないのに、両親に、勉強しろと言われるたびに、やる気を失います。 笑
やっぱり絵を描いている方が、楽しいです。
のぶえさんの本に挿し絵を書ける機会があったら嬉しいです。
夏海。
Commented by kakunobue at 2012-06-09 16:23
友美さん、コメントありがとうございます。
若々しく子どもたちに囲まれる友美さんを見て、いつも素敵だなあと思っていました。わたしは飲食店に職を得たのは20年ぶり。お客様の前に立つのはすごく緊張しました。体力的には本当に情けないですが、まさかこんなおばさんを使ってくれるところがあるなんて信じられないくらいうれしくて、気持ち新たに楽しく働いています。首筋やら肩やらあちこち痛いし、失敗もたくさんだけどね(汗)。
子どもと絵本を読んでいたあの時間は、もう過ぎてしまいましたが、今でも宝物です。たくさんのキラキラ時間を悔いが残らないように今のうちに過ごして、次のステップに気持ち良く進めるといいですね。応援しています。

夏海
あー、テストは辛いよね。わたしも高校生の頃は歌っている方が楽しかったよ。
そうかあ、夏海とコラボするためにもお話づくり、がんばります!
わたしには誰も「書け」なんて言ってくれないから、自分で言ってみよう。
「夏海が待ってるよ。いいお話、書きなさい!」「はい」

なんてね。


by kakunobue | 2012-06-01 16:43 | 日記 | Comments(2)

かくのぶえ フリーライター 日記・エッセイ・詩・イベント情報・こどもメッセージ集。


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