先日、蛍を見に出かけた。

夕暮れ時から車に乗って、約30分ほどできれいな小川のポイントに着いた。
車を降りてもまだ宵闇がおりていなくて、少し暗くなるのを待つことになった。

小川のそばにある一軒のお宅の庭におじさんがいて、「そこはマムシがでますよ」と声をかけられた。

そこはおじさんの家の私有地であること、マムシが出るのにずかずかと入ってきて、噛まれたと言ってうちに駆け込んでこられること、「蛍はどこにでますか?」とヘッドライトをつけた車に聞かれても、蛍は暗くならないと光らないから話にならないことなど、おじさんの憤懣やるかたない思いをじっと聞いた。

「少しは花鳥風月と言うものをわかっていただきたい」。おじさんの話は終わった。
「すみません。でもいろいろ教えてくださってありがとうございます」というと「いや、いや、なに」と少しはにかんで微笑んでおられた。

おじさんと別れて、川沿いを上流に向かった。
人がたくさんいた。小さな橋の上にも川べりにも。子ども連れも多く、大声で呼び合うのを聞いていると、おじさんの憤懣がわたしにもうつった。求愛のために光るのだから、ライトを当ててはいけないことを教えてもらって、わたしもライトは持っていたが蛍の恋路を邪魔したくなくて、つけないことにした。

あまりにも人が多くなったのと、静かに光を見たかったので、人ごみを離れてさらに上流に移動した。

ゆったりと流れる川面を、花をつけた大きな栗の木が覆っているようなうす暗い場所を見つけた。「あと10分で暗くなりますよ」と通りすがりのおじさんが教えてくれた。

田圃には水がはり、植えられたばかりの苗がゆれている。かじかの鳴き声が響き、せせらぎがここちよい。
静けさが訪れてしばらくすると、ふーっと光がゆらめいた。

草にとまって光を発している。木の葉にぶら下がっている。枝の奥に飛んでいる。
暗がりから次第に数が増え、ふーっと光りながら舞い飛ぶようすが浮かんできた。なんて幻想的なんだろう。

光は暗闇の中にあったのだ。明るい時は見えなかった光が。

そのゆらめきに心は奪われた。思わず「ほ、ほ、ほーたるこい」と小さな声で歌った。
甘い水が呼んでいる。甘い水が光を集める。

わたしの中に湧いている、水にも光、くださいな。
苦い水なら流しましょう。昨日の昨日においていけ。
光を集める甘い水、わたしの中からわきあがれ。
ほ、ほ、ほたるが舞う水、
ほ、ほ、ほほえんで、
ほ、ほ、ほっくり夢見て
ほんとのわたしになれますように。
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by kakunobue | 2012-06-11 17:41 | 日記 | Comments(0)

かくのぶえ フリーライター 日記・エッセイ・詩・イベント情報・こどもメッセージ集。


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